神田川に架かる萬世橋。
現在の橋は昭和5年(1930)に震災復興事業の一環として架け直されたもので、長さ26メートル、幅36メートルの石とコンクリート混成のアーチ橋である。
先代の橋は関東大震災では被災したもののすぐに修復されたように、焼失というほどの大被害ではなかったのだが、新たに地下鉄を開通させるにあたって渡航工事で水路変更が必要だったことから解体され、現在の橋に架け直された。
神田川に沿って伸びている赤煉瓦の建物は、明治45年に開業された万世橋駅の遺構で、駅舎の設計は東京駅と同じ辰野金吾によるものだった。
当初は中央線の原点である甲武鉄道のターミナル駅だったが、国有化後の大正8年に東京駅が完成すると中間駅となり、さらに東京~上野間の高架線(現在の京浜東北線・山手線)開通とともに利用客が減り、昭和18年に駅としての営業が休止される。
駅跡には休止前の昭和11年から平成18年まで鉄道博物館が入っていたが、現在はマーチエキュートという複合施設として再利用されている。
なお、地下鉄が萬世橋の下を開通し銀座まで延伸されるが、その工事中の昭和5年から2年弱ながら、東京地下鉄道の万世橋駅が暫定的に開業されている。
また、東京都電が運行された当時は万世橋電停もあり、隣の須田町とともに多くの路線が行き交うターミナル停留所でもあった。
ところで、萬世橋のたもとに建っている肉の万世のビルだが、3月いっぱいでこのビルでの営業を終える。
ビル老朽化が理由のようで、この風景が見られるのもあと僅かかも知れない。
肉の万世は秋葉原で闇市としてラジオ部品を販売していたのが原点で、のちに肉の卸売りに転じてからはステーキ・焼肉などを扱うレストラン、パーコー麺が名物のラーメン店をも手掛けるようになった。