隅田川の橋梁の多くは関東大震災を契機に復興事業で新たに架けられたもので、そのうち、清洲橋と勝鬨橋、そして今回取り上げる永代橋の3つが国重要文化財に指定されている(いずれも平成19年に指定)。
永代橋が最初に架けられたのは江戸時代の元禄11(1698)年だが、明治30(1897)年に鋼鉄製のトラス橋として架け替えられた。
これは日本初の鉄橋でもあった。
しかし、大正12(1923)年9月1日の関東大震災で焼け落ちてしまう。
隅田川には5つの鉄橋が架けられていたが、実はその多くが橋底の基部や橋板に木材が使用されており、永代橋も正にそれだった。
(両国橋と新大橋もそのタイプだったが、それらは焼失を免れ、避難路として機能した)
震災後の復興事業では隅田川9橋の再架橋が決まり、永代橋もその一つに含まれた。
かくして、大正15(1926)年12月10日に現在の永代橋が竣工された。
設計は竹中喜忠だが、橋梁設計のスペシャリストであった田中豊が原案を作成し、意匠面では建築家の山田守や山口文象も関わっていた。
ドイツのライン川に架かっていたレマゲン鉄橋をモデルとしたタイドアーチ橋で、清洲橋が「震災復興の華」と称されたのに対して、「帝都東京の門」と呼ばれた。
隅田川の橋梁の多くが日没から15分後にライトアップされるようになったが、永代橋は夜になれば鮮やかな青い光で染め上げられ、「永代橋ブルー」と称される程に美しい姿に。
そんな永代橋を鑑賞できる格好のスポットをここでまとめてみた。
1.隅田川大橋南側歩道
都道の上に首都高速道路も一緒に通っており、中央区側のすぐそばが箱崎ジャンクションだ。
隅田川大橋の歩道は幅が広く、橋上からリバーサイドの夜景を鑑賞するにはもってこい(頻繁に車が通るので振動や音は仕方ないが)。
永代橋が見られるのは南側の歩道で、大川端リバーシティ21をバックにした永代橋ブルーを堪能できる絶好スポットだ。
因みに、反対側の北側からは清洲橋とスカイツリーのセットが見られる。
あくまでも好みの問題だが、お勧めなのは断然、永代橋が望める南側だ。
2.隅田川テラス日本IBMビル附近
隅田川大橋の上だと振動と音がどうしても気になるという方なら、そのそばを通る隅田川テラスから鑑賞するのがお勧め。
隅田川の河川敷は大半が開放的な遊歩道として整備されており、「隅田川テラス」と名前がついている。
隅田川大橋近くの中央区側テラスからは永代橋や清洲橋、そしてスカイツリーのライトアップを眺めることができ、ベンチやあずまやもあるので、夜景観賞の雰囲気としては優れている。
最寄り駅は地下鉄半蔵門線の水天宮前駅で、T-CAT(シティエアターミナル)側の出口そこから5分ほどと交通の便が良い場所で、潮風に当たりながら、行き交う屋形船とリバーサイドの夜景を眺められる。
なお、隅田川テラスは全体を通して自転車の乗り入れ不可なので、どうしてもチャリが手放せない人は押して歩くこと。
3.豊海橋
日本橋川の河口に架かる小さいトラス橋、豊海橋。
橋自体は昭和2(1927)年、震災復興事業の一環として架けられたもので、梯子のような形をしているが(フィーレンディール橋と呼ばれる)、近くにある永代橋との景観のバランスを考慮した形だと言われる。
こちらも夜となれば白っぽいオレンジ色にライトアップされ、その姿からドラマのロケなどにも利用されている。
豊海橋自体も鑑賞に値する橋ではあるが、永代橋の鑑賞スポットとしても豊海橋はお勧めだ。
橋の上からは日本橋川の河口とともに永代橋ブルーを眺めることができる。
歩道が狭いので、じっくり鑑賞とまではいかないが、歩いて渡ってがてらに眺めるには悪くない。
なお、橋の近くの隅田川テラスからならベンチもあり、落ち着いて鑑賞できる。
4.石川島公園パリ広場
佃地区にある高層マンション群「大川端リバーシティ21」の裏手、豊洲運河沿いに面している南北に長い公園「石川島公園」。
「石川島」という名前、江戸時代に船手頭だった石川八左衛門が居を構えた場所だったことで付けられたもので、幕末には造船施設ができ、それが後のIHI(石川島播磨重工業)となった。
IHIが移転した跡地が再開発によってできたのが「大川端リバーシティ21」で、石川島公園はその一環としてできた公園だ。
石川島公園の北側に、御影石を敷き詰めた円形の広場があるが、その広場はフランスのセーヌ川が隅田川と友好河川を結んだ記念として「パリ広場」と名前がついている。
パリ広場もまた、永代橋ブルーの鑑賞スポットで、一緒にライトアップされたスカイツリーも望める。
なお反対側には、これまたライトアップされた中央大橋も望める。
5.中央大橋北側歩道
東京駅八重洲口から八重洲通りを経て、新川と佃地区を結ぶ橋「中央大橋」に差し掛かる。
隅田川の橋梁としては比較的に新しく、平成5(1993)年に竣工したが、フランスのセーヌ川と隅田川が友好河川として締結した関係で、設計はフランスのデザイン会社に依頼した。
北側の橋脚部には、当時のフランス大統領ジャック・シラクから友好の印として贈られた「メッセンジャー」と呼ばれる彫刻が鎮座している(作者はフランスの彫刻家オシップ・ザッキン)。
高い主塔を持つこの橋自体もライトアップされ、鑑賞に値するものだが、永代橋ブルーの鑑賞スポットとしてもまたこの中央大橋はお勧めである。
歩道に展望スペースがあり、永代橋とスカイツリーのセットを眺めることができるが、個人的には前述の「メッセンジャー」とセットで撮影したい。
6.永代公園
永代橋を間近で鑑賞できるスポットとしてお勧めなのは、永代公園だろう。
永代橋の南東、江東区側にあり、隅田川に沿って南北に長い公園で、間近の永代橋はもちろん、大川端リバーシティ21が作り出す夜景もここから鑑賞できる。
なお、対岸の中央区側にも新川公園があり、そこからも永代橋を間近から眺められる絶好スポットになっている。
昼だけでなく、ライトアップされる夜の美しさもまた格別である。
夜の散歩がてらに是非とも取り上げた鑑賞スポットから楽しんでいただけたら幸いである。